君までの距離

湯山さんの勢いに圧倒されていたら、またバンタイプの車がこちらにやって来た。

「来たようね」

にっこりと笑った湯山さんが、手を大きく振る。その仕草はその性格とよく合っていて一瞬見とれてしまう。

この車に高遠さんが乗っているかも、そう思っただけで心臓はばくばくしてきた。さっと身なりを確認して、髪もささっと撫で付ける。

ドアが開いて出て来たのは、茶髪に黒縁眼鏡の男性で、後から高遠さんがついて姿を現す。

「おはようございます高遠のマネージャーの蓮見です。本日はよろしくお願いします」

「おはようございます。高遠裕也です。今日の撮影、よろしくお願いします」

「白蓉堂の湯山です。こちらはクライアントの尾上様です」

残念ながら見学のアタシは紹介されることがなかったが、尾上さんと一緒に頭を下げておいた。

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