君までの距離

にっこり笑って尾上さんを見た高遠さんが、隣にいるアタシを見てびっくりしたように目を見開いた。

あ、気がついてくれた?

アタシを見て悪戯っぽく笑うと、お辞儀をして動き出した人の流れについて行く。

湯山さん、尾上さんがCMのイメージについて話しながら動いて行く。マネージャーも話には加わらないものの、どんなことを要求されるのか耳をそばだてて湯山さんと尾上さんに続いていく。その後に高遠さんが続き、最後尾がアタシだった。

すでにスタッフは撮影場所まで移動しているらしく、あたりには誰も居ない。



コンビニの駐車場から脇にそれて山に分け入ると、途端に寒い程の山の涼しさに見舞われる。

山の斜面にあるのは人一人やっと歩けるような道で、土を固めただけだった。

さすがにヒールの高い靴ではなく、スニーカーを履いて来ていたけれど歩き慣れない山道は早く進めない。
男の人である尾上さんやマネージャーならともかく、なんで湯山さんは早く歩けるんだろ。

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