君までの距離
山の端に突き出た岩を回る道で、先に行った人達が見えなくなり、焦ったアタシは小走りに追いかけた。
勢いよく岩を回りこむと、足元には水に濡れた岩があり、勢いがついていたこともあって体が道から飛び出す。
「きゃあああっ」
悲鳴をあげると、すかさず腕を引っ張ってもらい、なんとか斜面を転げ落ちるのを免れる。転げ落ちていった岩が、木々に当たりながら凄い勢いで斜面を下っていくのを見たら、恐ろしさに体がすくんだ。
もし転げ落ちていたなら、怪我しないでいられたはずがない……
「…なんかさ、いつもコケてるんだね」
声がしたほうを見ると、くすくす笑いを浮かべた高遠さんがそこにいた。
「いつもじゃないです」
かあっと頬が熱くなる。
「そう?会った時はいつもじゃない」
ああ、アタシを覚えてくれていたのは嬉しいけど、それはアタシの美貌とかじゃなくてドジのせいなんだ。
あまりの間抜けっぷりに、記憶に刻みつけられただけで普通に会ったら覚えてもらえなかったかもしれない。