君までの距離
ずっと見てる
一瞬だけ触れた手は、また自然に離される。あっけないくらいにさりげない。
ゆっくりと木々の間を抜けると、忙しく立ち働くスタッフが見えてきた。前を歩く高遠さんの背中が、緊張して力の入ってたものになる。
一番端のスタッフにたどりつくと、高遠さんはよく通る声を出した。
「おはようございます。よろしくお願いします」
ぴたりとスタッフが立ち止まる。声に吊られて何人かの顔がこちらに向けられた。
「おはよーっス」
「はよーっす」
「おはよー」
いくつかの返事が返されたのを聞いて、高遠さんの顔がゆるむ。照れるような恥じらいの浮かぶ顔が、マネージャー達をみとめて引き締まったものになる。