君までの距離

「岩まで渡り板を歩いてもらうつもりだったが、段差があって板を上手く渡せないそうだ」



顔をしかめた現場監督が言うと、湯山さんも岩に目をやりながら続ける。



「ボートや船があったら良かったのだけど…あいにく持ち合わがないの。近場のホームセンターまで買い出しに行かせるわ。撮影時間がかかってしまうけれど仕方ないわね」



きれいにフレンチネイルを施された指が顎に添えられた。
その姿はデキる女、デキる上司だった。

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