君までの距離

「うん…ずっと見てる」


靴も靴下も脱いで、高遠さんが岩に手をかけた。小さいとはいえ滝だけあって、落差は大人の身長くらいあった。高遠さんは、これから身長分の岩を登ってから川を渡り撮影場所まで行かなくてはいけない。

身軽に岩に手をかけて登っていく。危なげない足取りで登りきると、川へと足を踏み出した。

浅瀬を二、三歩行くと、急に深くなり膝の上までが水に浸かる。流れも早くなったようで、体がゆらりと傾いた。


危ない、と声にするより早くぐいっと体が沈み、伸び上がるように岩へと跳び移った。勢いでととっと進んだものの落ちることはなく、撮影場所でぴたりと止まる。


くるりと体がこちらに向けられ、笑っているのがわかった。

そして高遠さんは拳を突き上げて、『大丈夫だったでしょう』と声を張り上げた。

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