君までの距離
「湯山さん、違うアプローチもしますか」
待たされている岩の上で、高遠さんが問い掛ける。
「そうね。なんかしっくりこないの。あたしの中のイメージは、今日かなり書き換えられたものだから」
にっこりと綺麗にリップで縁取られた唇があがる。
「いいわよ。少し自由に動いてみて」
その言葉に、高遠さんは砕けた様子になり、瞳にまた悪戯っぽい光が宿る。
手にしていたお茶を川の流れに浸すと、自分で『テイクワンいきまーす』と宣言した。