君までの距離
顔をしかめた遥香が、パスタを口に運ぶのを中断してアタシを見た。
「…それで運命ですか?」
「だって…これは運命だって思ったの!だからまた会えるんだって…!!」
ゆるゆると遥香は頭を横に振る。
「せめて…名前か勤め先を知っていたら手立てがあったかもしれないのに…」
何にものを言わすのかは聞かないでおく。財力から探偵を雇うとか、広い人脈を当たっていくのか謎だけど、アタシを心配しての言葉に胸が熱くなる。
「とりあえず、街角で張ってみます…」
手立てがないというのは、偶然を待つしかないのだと気がついた。
届いていたピザを取ると、冷めかけて固まったチーズがぼとりとお皿に落ちる。シンプルなマルゲリータの具はピザソースだけになってしまったけれど、構わずに口に押し込む。
薄いピザ生地はぱりっとしていて、ちくちくした破片が口で暴れる。
アタシもこんなふうに具のないピザだと気づきもしないで、せっせと焼いているんだろうか。
空しいことに独りきりで。