君までの距離
着信は尾上さんだった。どうしたんだろう…取材陣の対応で忙しいはずなのに私用電話なんてらしくない。
つい眉間に力が入る。迷いは一瞬で、席を立ち廊下に出た所で通話ボタンを押す。
「渡辺です、どうしたんですか」
ざわめく会場の熱気の向こうから、叫ぶような尾上さんの声が届く。
「渡辺、いいからワイドショーをつけろ」
「え…どうしたんですか?」
「俺が説明するより早い。いいなワンセグがあるだろう?」
「……わかりました。すみませんが切りますね」
もやもやと胸が燻りだす。CM制作発表会にいるのは尾上さんだけじゃない。もちろん高遠さんだっている。
急いで休憩室まで行って、アンテナを伸ばしてチャンネルを合わせる。
一瞬の間をおいて画面が変わる。