君までの距離

「今回は特別に四つのバージョンがあるそうですね」

マイクを持つ記者が興味深そうに質問をしてくる。


「始めはひとつだけでしたが、広告代理店の方のリクエストに応えてアドリブをさせていただきました。冗談だと思っていたのですが、スポンサーからも許可がでて全部のバージョンを放送してもらえることになりました……正直、自分でも驚いています」

はにかむように笑うので、胸がきゅうっと締めつけられる。

きっとテレビの前にいる女性はみんなその笑顔にやられてしまうだろう。



「今日発売の写真週刊誌の記事についてのコメントお願いします」

「倉持里沙さんとの関係をお願いします」



畳み掛けるような質問が飛ぶ。アタシの心臓がドキンと大きく跳ねた。

画面を持つ手がかたかたと震えてしまい、画像が一瞬固まる。

< 141 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop