君までの距離
あの人は、あの日たまたま居合わせただけで、今日は違う場所で仕事をして、食事をとり、眠りにつくのかもしれない。
手がかりもなく人を捜すことが、こんなに大変だったなんて…運命だって思ったのはアタシだけなのかもしれない。
それでも出会った場所を立ち去りがたく携帯からブログを見る。
自分のブログは、更新が滞っていたことからランキングが激減していた。あんまり書く気分にならなかったからだけれど、いつもよりコメントは増えていた。
『春は忙しーって言ってましたよね☆落ちついたら続きお願いします♪毎日の楽しみなんです』
『ミーヤどっか行くなよ?落ち込んでるなら話きくからさ』
『ずっと待ってるから早く帰ってきなよ?』
弱くなっていたアタシの涙腺は、たがが外れてしまった。会ったこともない人達なのに、アタシを待っていてくれる。
涙は溢れてしばらくは画面がぼやけて見れないくらいに、とまらなかった。まだ人通りのある路上で、まわりに構うことなく泣いた。通りすぎる人達は、関わりあわないように遠巻きにアタシを避けていく。中には、「なにあれ、泣いてる」とか言われた。
でもいい。こんなに回りに人がいても関わり会えるのなんて、ほんの数人でしかない。場所も時間も離れていても、ネットの住人がアタシを心配してくれた言葉は真実だ。
鼻を啜りながら、アタシは一件、一件コメントを返した。明るく冗談を混ぜて。泣いたことはほんのちょっぴりだけだと強がりを言った。とても書ききれない、ぐちゃぐちゃの気持ちだったけれど、アタシは確かに小さな携帯で繋がっていた。