君までの距離
気休めにしかならなくても、店長がアタシに気を使ってくれている。
この店は初めてでも、他には行ってるかもしれないのに。
結局、よくわからないけれど、なんだか笑いが込み上げてきた。
「ありがとう店長。そんなに何でも、高遠さんのことがわかるわけないですよね」
「そんなに詳しけりゃ立派なストーカーになっちまう。基本、お客様のプライベートを他人に明かしちゃいけないだろう。だから話したことなんか言わないさ。ただねぇ…あれは男女の仲って色気はなかったよ」
はっとして店長を見ると、にやっと笑っていた。
「それなら、いいんですけどね」
「それで、どうして未也ちゃんは裕也の女ってのが気になるの」
「はいぃ?」
思わず声が裏返る。かあっと顔が熱くなって、恥ずかしくなってきた。