君までの距離
すると店長はしいっと言って階段の方を見上げた。
今まで気がつかなかったけれど、上の階から話し声がする。
お客様は、もう来ていたらしい。
それなのに、店長さんは慌てずに小鉢をお盆に並べていた。
「すみません、アタシもう帰ります」
「いいよ。ちっとばかり待ってな。面白いもんが見れるから」
並べた小鉢には、冷蔵庫から塩辛が出されてきて盛られる。最後に柚子の皮をそいで沿えると、青い瓶が綺麗な冷酒と、色を合わせた切子のグラスを並べた。