君までの距離

「今回ばかりは店を替えればよかったのに、頭が堅えや。今までがそうだからって、同じにするこたぁない」



激しい口調でまくしたてる声がして、ばん と二階の襖が音をたてる。

物が落ちるように階段が音をたて、人が降りてきた。
びっくりして目を見開いていたら、波を蹴立てるように暖簾が膨らみ、高遠さんが現れた。



「帰るのか、裕也」

店長が声をかけたことで、高遠さんの視線がこちらに向く。

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