君までの距離
射るような視線が、アタシを見留めて見開かれる。驚いたのは一瞬で、すぐに逸らされた。
高遠さんは何かに耐えるように口を結んだ。俯いた顔の眉間には深いしわが刻まれている。
「ごめん、勝次さん。また今度寄らせてもらうから」
「おう。いつでも寄りな。旨い物を出してやるから」
高遠さんは、素早く靴を履くと作り笑いを顔に貼付けて、出ていってしまった。
……声が掛けられなかった。
あんな苦しそうな顔を見たら、なんて言っていいのか
…胸が苦しくて言葉が出てこなかった…