君までの距離
「アタシが行ってもいいんですか」
唇を笑いの形にして代表が答えてくれる。
「貴女に賭けてみます」
そして高遠さんへの伝言を聞いたアタシは店を後にした。
「いいんですか、橘さん」
冷酒をくいっと飲んだ代表に、眼鏡を直しながらマネージャーの蓮見が詰め寄った。
「いいさ。あれだけのことを言ったんだから裕也も腹を決めただろうよ」
橘代表は手酌で冷酒を注いで、塩辛に箸を付ける。
「ですが、これではさらに噂の種を蒔くようなものです」