君までの距離
「俺はね大学在学中から劇団に足を突っ込んでて、大学の劇団と今の劇団を梯子してた。その頃は箱も小さくてね、小劇団だったよ。大学でも練習してたけど、ここでもよく練習してたんだ。
嫌なことがあった時もここに来て、我を忘れて稽古に励んだりした場所なんだ。そんなこと橘さんにはモロばれだったね」
そう言って高遠さんは笑った。高遠さんを取り巻く状況はなにも変わらないのかもしれないけれど、その声には迷いなどなかった。
アタシ達が並んでこいでいるブランコの前には、真っ赤な夕焼けが広がっていた。
空を焼き尽くすその朱は鮮やかで、たなびく雲の蒼がとてもキレイだった。