君までの距離
「なんで?どんな理由があっていなくなったり出来るんだよ」
俺の問い掛けに勝次さんは頭を振った。
「言わないのなら言えない訳があったんだろうよ」
がっくりとうなだれる。実はここに来る前に彼女の会社に電話を入れていた。
自分の名前を名乗って彼女のことを尋ねると、相手が息を飲むのが携帯から伝わってきた。
「申し訳ありませんが、個人のプライベートな事柄についてはお答えすることはできません……」
凛とした声でそう告げられた。
それは想定していた事柄にすぎなかったが、その後やわらかな声が続いた。
「……そう未也が決めたなら……何か考えがあっての事です……あたしは彼女を応援します」
「あなたは」
「彼女の……親友です」
彼女がいい友達に恵まれていることに自然と顔が緩む。
「……彼女をよろしくお願いしますね」
「もちろん……あなたに言われるまでもありません」