君までの距離
きっと自分は、ずっと変わらないものが欲しくて探している。
それが何かわかりそうだったのに……
カウンターに突っ伏して目を閉じる。
「勝次さん、旨い物が食べたい」
我が儘が言えるのは、付き合いが長いからだ。勝次さんなら大丈夫だという甘えがある。
「たまには裕也に腕を振るうのもいいだろうよ」
「弱ってるからいたわってよ」
「世の中そんなに甘くないよ」
勝次さんの包丁さばきを聞きながら、これでもそう悪くないと思っていた。