君までの距離
「祐也、そろそろスタジオに入って下さい」
マネージャーの呼びかけに、台本を持って立ち上がった。
控室からスタジオに向かうと、隣のスタジオから出て来る人が視界に入り息を飲む。
さらりとしたボブも、華奢な体も変わらない。見つめていても気がつくことなく、背中を向けて歩きだした。
「……蓮見さん」
背後についていたマネージャーを見ることなく声をかける。視線をそらしたら、また消えてしまうと痛いくらいにわかっていた。
「5分くらいなら、なんとかごまかせます」
「ありがとう」
言いながらすでに走り出していた。角を曲がっていく彼女を追いかけて床を蹴る。