君までの距離

「まだ仕事が残っているから行くけど、待っていて」


そう告げると、頬を赤く染めた彼女が頷く。名残り惜しくても、皆を待たせる訳にはいかない。



「蓮見さん、この後の予定を彼女に伝えて、勝次さんの店で落ち合えるようにしてください。それから連絡先を聞いておいて下さい」



仕事で撮影に入る場合は携帯は、マネージャーである蓮見さんに預けてある。本来なら自分で連絡先の交換をしたいところだが、自分の我が儘で出演者やスタッフに迷惑をかける訳にはいかなかった。



「本当に時間がなくてごめん。終わったらゆっくり説明してもらうから」

最後にちくりと刺を忍ばせると彼女は肩をすくめてみせた。

< 206 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop