君までの距離
だけど場面が変わって、アタシは見てしまった。
忘れたくても忘れられない、幻だとしたら苦しくて、また会いたくてたまらない彼の姿を。
『わかりました。すぐに検査にまわします』
そう言って彼はあっという間に画面から消えてしまった。
また姿を見れた嬉しさに、声が詰まりアタシは遥香を見た。
遥香も驚いたらしく、ぱっちりした瞳を見開いている。
「……やだ、偶然。そんなつもりなんて……なかったのよ?」
ふるふるとアタシは頭を振った。
「嬉しいよ…アタシ、幻を見てたんじゃないよね?遥香も見たよね」
こくりと遥香も頷く。
「……確かに……見覚えのある顔とスーツだったわ……」
「……よかったぁ」
じわりと視界が歪む。
姿を見ただけで、こんなにアタシは嬉しい。たとえテレビ画面の中だとしても、存在してくれていただけで嬉しい…