君までの距離
「ええと…やっぱり格好よさですか。イケメンランキングでも上位の俳優さんだし…」
わたわたと慌ててしまい、無駄に腕を振る。
「そーね。まあそりゃ普通よ。視聴者は見たことない速峰瞬を見たい訳よ。あんたどんな男の仕草にぐっとくんのよ」
思い出したのは、さっきの高遠さんで顔が赤くなる。
誰かに好きになってもらって、あんなに求められたのは初めてだった。
そっと唇に手で触れてみるけれど、それはあの高遠さんの唇の感触とは違っていた。
「なに赤くなったんの。やらしー。この回では肉体的なコトはナシだから。チューもダメ」
「ち、違います、そんなの書けないです」
何と言っても、経験値が低すぎる。
「ふっふっふ。そこはアタシの腕の見せ所でしょうが!!」
キラリと眼鏡を光らせてアタシを見る目は、なんだかヤバい光が宿っていた。