君までの距離
時計を確認すると、まだ時間がある。パソコンを立ち上げて、今日の変更箇所を直しはじめた。
しばらくパソコンに向かい合って直していると、くすりと笑う声が背中でした。
慌てて振り向くと、高遠さんが笑いながら後ろに座っていた。
「知ってる?百面相をしながら打ってるよ」
声が耳のすぐ後ろからして、肩に高遠さんの体の重みを感じた。寄り掛かった高遠さんの頭が、アタシの肩に乗っていることになる。
「…ち…近すぎです」
「そんなことないよ。離れていた分を埋めないとね」
笑い声が耳にかかり顔が熱くなっていく。
「このままじゃ緊張して打てません」
「じゃあ代わりに打ってあげようか?」
後ろから包み込むように腕を伸ばし、手を重ねる。抱きしめられるような体勢で、触れている部分があたたかい。