君までの距離
アタシが泣き止むのを待ちかねたように、襖におとないの声がかかる。
「裕也、食事が出来たぞ」
「どーぞ。どーぞ」
勝次さんの声に慌てて立ち上がろうとするけれど、高遠さんはアタシを抱える腕に力を込めるので、立ち上がれずに膝の上にいた。
「おいたはしていないようだな」
勝次さんの目線がちらりと投げられると、アタシは恥ずかしくて膝の上で少しでも体を離そうと高遠さんの肩を押した。
アタシの力なんて無いも同じで高遠さんとの間には、ほんのわずかな隙間しか開かない。
顔だけでなく、体じゅうが熱くなるくらい恥ずかしい。
「ここでなんて勿体ない」
色気のある声に、勝次さんも笑って答える。
「裕也にも分別がついて良かったよ」
「ちょっと止めてよ。その言い方だと、俺が見境もなくここに女の子を連れ込んで悪戯してたみたいだ」