君までの距離

食事が並べられたことで、アタシはやっと高遠さんの膝から下ろしてもらえた。
「このまま食べたら?」という言葉は丁重にお断りしたからだ。



「蛸の刺身食べて。皮をむいてあるから食べやすいよ。あとカレイの唐揚げも美味しいから、熱々のうちに食べて」



にこにこと笑う高遠さんは大きな口を開けて、それでいて上品に食べ物を口にする。見ていて気持ちのいい食べ方だった。

うっかり見とれていたら、カレイの唐揚げを一切れつまんで差し出してきた。



「冷めるから、早く食べて」

「これって…もしかして」

あの漫画の世界とかには存在しているとかいう、あーんとかいうもの?

「はい、あーん」

「あの、なんかその…恥ずかしい、です」


「いいんだよ。誰も見てないから大丈夫」

< 237 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop