君までの距離
「少し遠回りしていこう」
月も中天を過ぎ、店を出た高遠さんが歩きだした後について行く。
「いいんですか」
一年前、あんなに拒んだことが嘘みたいに、高遠さんは自然体だ。
「いいんだよ。好きな子といたいのは当たり前だから。ただ未也ちゃんを守れるだけ強くなりたいってずっと思ってた」
夏の風が高遠さんの髪をさらう。
「君が居なくなってから、俺は前よりも強くなった。
俺だって一年を無駄に過ごしていない。
これからは一緒にいて守りたいんだ」
振り返った高遠さんが手を差し出す。
手を握ると、きゅっと握り返してくれる。
そんな些細なことでも涙が出そうに嬉しい。