君までの距離
「サンプルはブラウン系、レッド系?」
「そうですねーブラウンで」
サンプルを指で示すと、にっこり笑って「用意するから待っててね」と奥に引っ込んだ。
用意した薬液を髪に馴染ませながら、なにげなくイケメンが禁句を口にした。
「失恋でもしたの?」
「え?違いますよ」
「だろうね。そんな感じはしないから。髪を切るのにはねイロイロ意味があるんだけど、やっぱり綺麗になりたいからなんだよね」
話しながらも、長い指はくるくるとよく動く。
「うんと綺麗にしてあげようね」