君までの距離
「……悔しい?変なこと…言うのね」
「どうしてこんなに輝いているんだろって思ったら、悔しくなったの。アタシ何かをこんなに頑張ったことってあったかなぁ」
ソファーの背もたれに頭を乗せて、天井を仰ぎ見る。
一回くらいあったかな。作文コンクールで候補として選ばれた時だ。先生から何度も書き直しを出されて、最初から何度も書き直した。パソコンや携帯なら削除も挿入も簡単に出来るのに、原稿用紙だとそんなことができない。ほんの数文字直しただけで改行するはめになるし、その改行のせいでそれ以降の文章は全部書き直しだ。
消しゴムの跡が残る原稿用紙を見て、最後にもう一度清書させられた。
その時には、やけに回りが静かだった気がする。紙を滑る鉛筆の音と、原稿用紙をめくる音しかしない。もう直すところなんて考えられないくらい、アタシにとって完成された文章。今でも覚えている。清書が終わるまで、日差しの陰りはじめた教室にいたことすら忘れて夢中になっていた。
なにかアタシも夢中になれること、してきたんだろうか。