君までの距離
ふいに鳴った携帯の表示は遥香からだった。ちょっとした確認ならメールを先にくれるのに、電話が先に鳴るのは珍しい。
「……未也、今なにかしてるかしら……」
遥香の背後にはざわめきがあり、外で話しているようだ。
「ううん大丈夫。動画のサイトから高遠さんの舞台を見てただけ。何もしてないよ」
顎に携帯を挟んで、パソコンを操作する。動画の時間は10分しかないので、こまめにダウンロードを繰り返して根気よく見ていくしかない。
「……そう。今から出れる?……」
「大丈夫だけど。食事?買い物なら早く言ってくれたら朝から付き合うのに」
つい髪をくしゃくしゃと掻きむしる。パジャマ替わりのジャージと、襟のだぶついた長袖Tシャツでいるのは内緒だ。
「……違うの……新宿駅まで出てきて?着いたら連絡をちょうだい……」
「あーわかった。支度して電車に飛び乗るから待ってて。誰にもナンパされないでよ」