君までの距離
指先が震える。
「…ここなの?」
『……ええ…入口から入ってきて。当日券売り場にいるわ……』
ぷつりと通話が途切れて、信じられないと思いながら片手で携帯を閉じる。
劇場の規模に圧倒される。専用の劇場を持った劇団なんてそうはいない。知ってるのなんて、劇団四季とか宝塚しかないけど。
この劇場いっぱいの人が、高遠さんを見に来る。自分でチケットを買って、わざわざこの劇場まで足を運んでくるんだ。
まるで自分が舞台に立ったみたいに緊張している。足、震えてるじゃない…
大きく息を吸って、深呼吸してから、アタシは目の前の劇場に向けて足を踏み出した。