君までの距離


会場全体に明かりがつき、人の流れが外へと続いている。

アタシはぼんやりと椅子に座って、入り口の混雑を避けていた。



手元にある感想用紙に記入しようと思うものの、ちっとも言葉が出てこない。

初めて見た舞台に圧倒されて、言葉としてまとめることが出来なかった。



まだ会場には、ぽつぽつと席についている人がいて、感想用紙に向き合っていた。



やっとの思いで言葉を探しても、その言葉があっているのか不安になる。

アタシの言葉は、きちんと届くのか?

でも書かないでいたら、なにも伝わらない。




館内清掃に入るアナウンスがあり、席についていた人も押し出されるように扉から出て行くことになる。

仕方なくアタシも、書きかけの感想を手にロビーまで移動する。
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