君までの距離
えっ……
慌てて手を伸ばしても、すっと避けられた。
そんなの恥ずかしい、恥ずかしすぎる……!
「あっ…やだ…あんまり見ないで…」
感想用紙で顔の半分をおおっている高遠さんが、目を見開く。
そして、すぐに意地悪な顔をした。
「なんかヤらしい。そんな顔よそでしたらヤられちゃうよ」
「……そんな」
この人、意地悪だ。
「おーい裕也」
男の人の声がして、アタシは我に帰る。
「舞台すごく格好良かったです。あのっ…すみませんでした」
お辞儀をして、まくし立て、そのまま踵をかえして逃げた。