君までの距離
「もうランチの時間じゃないけど、何か食べるかい。ウチのランチは親子丼かお任せしかないんだよ」
その言葉に慌てて時計を探す。
時刻は5時、だった。
「……すみません、もうランチ終わってますね。お店、準備中ですよね」
しょぼくれたアタシに、お店の人は優しい。
「いいよ。疲れてるんだろう。この店は俺の店だから、何も気にすることないさ。俺の料理で元気を出してもらえるなら、こんな嬉しいことはないからね」
にこにこと言われて気持ちがほぐれる。
それなら、手早く出来て安いであろう親子丼にしようと考える。
「じゃあ…親子丼ください」
「いいよ。ちょっと待ってな」
店長は、お客さんにするような返事ではなく、近所の人に言うようにアタシに言った。