君までの距離
紙をセットしてコピーを始めると、しゃこしゃこ出てくる紙をつい見つめてしまう。
高速で吐き出される紙に、『高遠』の文字が見えて慌てて一部抜き取った。
自社がスポンサーに付いている番組に流すCMの候補として『高遠裕也』の名前が上がっていた。
鷹峰さんや高遠さんの出演しているドラマのスポンサーがウチの会社だったんだ!
「あー…気が付かなかった…」
会社だと忘れて、がしがしっと頭をかいてしまう。
もしかして。
もしかすると…
高遠さんが選ばれるかもしれない。これは注目株だとプッシュしておかなくては。
俄然コピーに熱がはいる。思いがこもるなら、込めちゃってとばかりに、ぎゅうぎゅう蓋を押し付けてみた。
コピー出来立ての温かい紙をぎゅっと抱きしめて、念を込めてみる。
ホチキスで留めながら、高遠さんのプロフィールの紙の隅をさりげなく折ってみた。
よく通販雑誌のページ隅を折って目印にするみたいに。