君までの距離




資料の上に、ぽつりと雫が落ちた。

わかってたじゃない、そんなこと……

つまった鼻をぐすんといわせて、ティッシュではなをかむ。



ドラマで、CMで高遠さんの姿を見れるようになるのは嬉しい。





でも

あんまり有名になってもらいたくない気持ちもある。
みんなが知らない高遠さんを知っていたい。



そんな気持ちもある。






ごしごしと折り目をもう一度直して、机に配布していく。

資料を確認すると、自社のお茶のCMだったので、来客用のお茶を自社のペットボトルで用意してグラスも揃えておく。

会議用機材の確認を終えて部屋を後にしようとした。


だけど後ろ髪を引かれる。

アタシには決定権などない。CMは会社の顔であり、イメージを作る大切なものだ。

高遠さんに遜色があるとは思わない。でも言いようのない不安が気持ちを重くする。

もう一度、会議室を確認して、会議が終わったら結果を聞いてみようと思いながら、やっと会議室を後にした。

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