君までの距離
「先輩は知らないんです、尾上さんの人気を」
正直、興味がなかった。どちらかといえば活字中毒が昂じて自分で小説を書いているくらいだ。
リアルな恋愛より都合のいい二次元の恋愛のほうが楽だ。
どんな無茶ぶりをしても決して気持ちを変えない彼。
そんな都合のいい恋愛なんて現実にはない。
つい先日まで遥香に、自分のタイプがいないとこぼしていたくらいだ。
「尾上さんとは仕事の付き合いだけだから。どうなるという事もないよ」
「勿体ない~~」
「そんなことないよ。愛ちゃんアピールしてみたら」
「私なんて眼中になかったですもん」
ぷりぷりしながらまたパソコンに視線を落とす。