君までの距離
常日頃から尾上さんにはプレゼントが届くのだろうか。
アタシの持ってきた物は、仕事の資料であってプレゼントではない。
きちんと説明しなくては。
口を開こうとしたら、先に言葉が耳に届いた。
「おっ渡辺、悪いな」
振り返ると、きちんとスーツを纏った尾上さんが立っていた。
はっきりと先程の女性の態度も柔らかくなる。
「早いほうがいいかとお持ちしました」
「俺が言い出したことだから取りに行ったのに。悪かったね」
紙袋を覗いて、ファイルに気づくと「これは」と首を傾げた。
「それはアタシからのおまけです。ここ一、二ケ月くらいですが高遠さんについての資料になればと思って」
ファイルにまとめたものは、ホームページからの経歴のコピーや最近掲載された雑誌の記事、舞台のチラシやパンフレットまでに及ぶ。尾上さんは、ぱらぱらとめくって感嘆の声をあげた。
「渡辺がファンだったなんて知らなかったよ」
「ファンだなんて程じゃありませんよ。つい最近目覚めちゃいましたから」