君までの距離
ぽかんとしたアタシが背中を見送ると、向かい側の愛ちゃんが言った。
「なんか必死ですね、尾上さん。外から帰って直接こちらに見えたようですよ。まだ鞄を持ってましたから」
「そうだね。資料返してくれるのいつだっていいのに」
デスクに散らばったペンやクリップを片付けながら返事をする。
「メールで用が済むのに、わざわざ出向いたって、相当ですよ」
「アドレス交換なんてしてないからだよ。用があれば隣の部署にいるんだから」
がっくりと愛ちゃんの肩が落ちる。
「先輩ーヒドイ、悪女」
「なんで?仕事の付き合いしかないんだから、社内メールでもいいじゃない」
「社内メールは私用な要件では使いません。かわいそー尾上さん」