君までの距離

ぽかんとしたアタシが背中を見送ると、向かい側の愛ちゃんが言った。

「なんか必死ですね、尾上さん。外から帰って直接こちらに見えたようですよ。まだ鞄を持ってましたから」

「そうだね。資料返してくれるのいつだっていいのに」

デスクに散らばったペンやクリップを片付けながら返事をする。

「メールで用が済むのに、わざわざ出向いたって、相当ですよ」

「アドレス交換なんてしてないからだよ。用があれば隣の部署にいるんだから」

がっくりと愛ちゃんの肩が落ちる。

「先輩ーヒドイ、悪女」

「なんで?仕事の付き合いしかないんだから、社内メールでもいいじゃない」

「社内メールは私用な要件では使いません。かわいそー尾上さん」

< 80 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop