君までの距離

「まあ、これからが勝負ってことかしら。取り合えず今日はアドレスだけでも…ね」

妙に愛ちゃんに力が入っている。


「そうと決まれば早く更衣室です!先輩急いで」

自分の机はそのままに、アタシの手首を引っ張って連行する。

「早く着替えちゃって下さい」


そう言うなり、愛ちゃんは自分のポーチをひっくり返した。大きめのポーチにはお化粧を落として、また最初からやり直せるだけの化粧品が詰まっていた。

この時間からまたやり直しなんてたまらない。急いで着替えたアタシを愛ちゃんが指先をくいっと持ち上げて呼んだ。

「なんと言っても時間がありません。仕方ないのでアイメイクだけでもきちんとします」

そしてビューラーでぐいぐいと睫毛を上げてきた。

「痛いよ、愛ちゃん」

「先輩のアイメイクは甘いです!いつかきちんとしてあげようと狙ってたんですから。諦めて大人しくして下さい」

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