君までの距離
ビューラーであげて、マスカラをつけ、アイラインを引いてくれる。慣れた手つきでアイメイクを終えて、アタシに鏡を貸してくれる。
普段、きっちりビューラーであげたり、マスカラを付けないアタシの目は確かにぱっちりした。
「わー1.5倍」
「先輩だって頑張ればこれくらいすぐです」
「んーでも朝の時間は貴重だからねー」
朝起きてブログをチェックする至福の時間を削ってまで、アイメイクへの情熱はない。
そこがアタシの残念ポイントだと思う。
「ダメですよう、これくらい常識の範囲です」
「いいの、いいの。回りが不快にならなければ」
約束の時間が迫っていたので、さっと席を立つ。バックを出して、ロッカーの鏡に顔を写してもう一度確認する。目のぱっちりした、見慣れないアタシが笑っていた。
「うん。メイクありがと」