君までの距離
アタシが慌ててエレベーターから転がり出ると、すでに尾上さんは待っていてくれた。
そのあまりの早業に、ぽかんと空きそうになる口を引き締める。
「お待たせしてすみません」
「好きで待ってるんだから、気にしないで。行こうか」
にっこりと笑った尾上さんと並んで歩き出す。あちこちから刺すような視線を感じていたたまれない。ちらりとうかがうと、綺麗にハーフアップしたパンツスーツの女性だったり、エアリーな髪のワンピースの女性だったりした。
同性の反感を買っているということに、くらくらと目眩をおこしそうだった。
出来るなら、誤解だと弁解してまわりたいけれど、アタシの気持ちに気づかない尾上さんはすたすたとホールを横ぎって行く。