君までの距離
整いすぎて冷たさも感じさせる容姿だったのに、優しさを感じる仕種に、きゅうっと胸が締め付けられる。
すっと両手でアタシに靴を差し出すまで、ただぼうっと見とれていた。
「どうぞ履いたら。肩貸そうか」
「だっ大丈夫」
慌てて履こうとしたら、片足だけヒールだったのでバランスを崩してよろめく。
「ほら、肩につかまっていいから」
ぐいとつかんだ腕を肩に乗せる。
背中からはファンの子達が嬌声をあげている様子が伝わってくる。プロデューサーから指示しているような声もあがるし、遠くを走る電車の振動音もしていた。
それなのに。
まわりは音で満ちているのに、一瞬で全ては消え去った。