君までの距離
道端に立っていたアタシの隣に白い車が止まった。チカチカとハザードランプを点滅させているのは尾上さんだった。
「待たせたね。乗って」
乗り込むと、尾上さんの香りがふわっと香る。
「今日はよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、頭の上で笑い声がした。
「会社の延長じゃなく、楽にしてくれていいからね」
「いや…でも緊張しますね」
尾上さんは生地にぽつぽつと刺繍でドットの入ったシャツに、下にはジーンズを合わせていた。合わせた腕時計もカジュアルなクロノグラフで、休日の服装だった。
移動の足が確保できたことに安心していたけれど、撮影現場までは、たっぷり二時間はかかる。その間、車で二人きり。
どんなことを話したらいいのか、頭がぐるぐるしてきた。