君までの距離
確かにあらゆるジャンルを取り揃えてあった。演歌と童謡がないのが不思議なくらい。
洋楽にクラッシック、AKB、EXILE、ゆず、Mr.Children、スガシカオ、サカナクションまである。
かさかさとケースを見ていたら、一枚だけ白いディスクに油性ペンで『流れ』と書いたものがあった。
どうやらディスクに焼いてくれた人が文字を書いたようで、さらりと流れるような文体だった。
「尾上さん、これ何ですか」
言っておきながら、運転中だと気づき、慌てて付け足す。
「ああっ…そのまま、そのまま運転しながらで聞いてください。よそ見しないでいいですっ」
ちらりと窺うとくすくす笑いがおきていたけれど、こちらに注意が向いては危険だ。慌てて一気に冷や汗が出た。
「あのですね、預かったCDの中に白いディスクにペンで『流れ』と書いてあったものがあるのですが…」
「興味があるならかけてみようか。今回のCM用に編集してもらったものだから、まだ社外秘なんだよ」