恋人境界線
大学の長い夏休みが明けて、登校する日がやってきた。
イベントサークルの集まりは週一くらいであったけど、あたしは一度も参加しなかった。休み中のレポート提出を、あいつがノート無しでどう作り上げたのかは知らない。
講義室に向かう前に、掲示板で足を止める。
休講や補講になる授業を確認していたとき、ふと背後に人の気配を感じて、ゆっくりと振り向いた。
「…っ」
後ろに立っていたのは
「…ど、どうしたの?その顔…」
左頬を真っ赤に腫らした、春臣。
日焼けの跡、なんかじゃないのは一目瞭然。痛々しいほどに腫れ上がっている。
「真島に殴られた」
「っは!?」
思わず大きな声が出た。
真島くんとは春臣同様、高校からの付き合いだけど、二人は普通に仲良かったし、温厚な性格のイメージがあったのに。
「真島が薫を好きだって、お前気付いてた?」
殴られた頬をさすった春臣は、目線を下に落とした。
真島くんが、薫を?
『なんだかんだ言って、あいつらうまくいってるみたいだな』
「…全然、気付かなかった」
「だよな、俺も。」