恋人境界線
思い出をすべて一冊の綴りに仕舞い、サークル活動を紹介する部屋として使われる講義室に向かう。
中にはすでに、野球部やサッカー部のパネルやトロフィーが飾られていたから、あたしは折り畳み式のテーブルの上に冊子を適当に放った。
あっけなく、終わった。
帰ろう、と思ったときだった。
足音が近付いて来て、講義室の前で止まる。
ドアの方を見たとき、体が強ばったのを感じた。
「か、薫……」
あたしの顔を見て、次に今さっき手元から放したばかりの冊子に目をやると、相手は小さくため息を吐いた。
「志麻ってさ、なんでも難なくこなすタイプだよね」
大きく起伏がある口調で言いながら、薫はこちらに歩み寄る。
「講義のノートだっていつも完璧だし、誰もやりたくなかったサークルの仕事もこなして」
「……」
「そんな風に上っ面がいいのって、」
そこで冊子を取り上げると、一瞥してまたテーブルの上に投げ捨てる。
「他人に本音打ち明けて、自分が傷付きたくないからでしょ」
真向きに立って、薫の表情を見つめる。