恋人境界線

付き合い初めて、ひとつの季節が通り過ぎた。それは激しく強い嵐を伴う季節だった。
湿った風が吹き荒れ、散り散りに舞う木々の葉で前が見えず、乱れる呼吸さえままならなくて。

何度も、立ち止まった。
嵐の秋。

けれども、そんな荒れた天候は、次第に雲間からこぼれる太陽の光に緩和され、冬がくる前には、清々しささえ感じたんだ。


「“新春”……?」


体に反動をつけてベッドから半身を起こした春臣は、立ち上がり、きょとんとするあたしの目の前にあぐらをかいた。


「そ。俺、正月に生まれたから」
「ああ、そうなんだ」


春臣の誕生日はお正月か。またひとつ、彼のことがわかった。

決して交わることはないと思っていたあたしたちが、境界線を越えて結ばれたのは、未だに奇跡だと思う。幸せ過ぎて、怖いくらい。

だけどお陰で、ただの友達のままじゃわからなかったことも知ることができた。
例えば春臣は、毎年家族で初詣に行くことや、極度の寒がりでヒーターの設定温度がやたら高いこと。
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