恋人境界線

「だから俺、心が冷たいんだよ」


例えばこうやって、根に持つこととか。
こちらにずいっと顔を近付けた春臣は、刻むように小首を傾げた。


「冬生まれの人は、心が冷たくなんてないわ」
「そう?志麻の持論でいくと春生まれの人は心が暖かいっつーから、てっきり冬生まれは冷たいもんだと」
「それは…!言葉の文、っていうか……、」


お揃いの香水の匂いが、あたしたちの間でぶつかり合って、より深い香りに生まれ変わる。
甘いお花みたいだけど、どこかスパイシーで洗練された匂い。


「それよりっ!来年の誕生日は、あたしが祝ってあげるね。何日?」
「四日だよ。一月四日」


あたしはすぐに、頭の中のスケジュール帳に印を付けた。もちろん印なんて付けなくても、忘れる心配はないのだけれど。
一月四日まで、あと四日。


「ケーキ買って、ロウソクも立てて、……春臣って甘党だったよね?」
「…志麻、張り切ってんなー」
「だって……」


イベントにこだわりたい。ずっと、憧れていたから。
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