恋人境界線

年明け早々、三が日は実家で過ごすと言って、春臣は帰省した。
きっと、今年も家族で初詣へ行ったのだと思う。あたしは静佳と一緒に行った。

去年までは、神頼みする内容はひとつに絞られていた。今年からは、その内容に変化があって。そういう、小さな習慣の変化が、あたしに春臣との幸せを更に印象付ける。

そして、一年中で一番町に人出のあるこの時期。
あたしは人混みに酔う覚悟をして、お正月セール真っ只中の町に繰り出した。目的は、春臣の誕生日プレゼントを買うため。

予想通り、どの店も混んでいる。接客につかれるのが苦手で普段は敬遠しているショップも、福袋効果なのか店員がレジに集中している。こんな日こそゆっくり見れそう。


「…て、先にプレゼントを買わなきゃ」


来た意味がない。

酸素の薄いショッピングモール内を人並みを掻き分けて行き来して、両足が痛くなってきた頃。
あたしはこれまでなら絶対に用がなかった、メンズのショップに初めて足を踏み入れた。


「いらっしゃいませー!」
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